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2024年度宮地裕基金人材育成研修講座 実施報告「日本語教育関係者向けケースメソッド教授法セミナー」

主催者

アドゥアヨム・アヘゴ希佳子,鈴木綾乃,鈴木秀明,羅曉勤

研修内容

 近年注目されているアクティブ・ラーニングの一つであるケースメソッドは,ケース教材を用いてディスカッション授業を行う教授法です。本研修では,日本語教育関係者がこの教授法を身につけることを目的として,慶應義塾大学ビジネススクールよりケースメソッド・インストラクターとして認定されている主催者4名が講師となり,研修会を実施しました。

 研修を通して,参加者に獲得してほしいことは以下の3点でした。
 1.  学習者の背景を把握し,ケースの内容を分析した上で,教育目的を設定し,授業計画書を作成できること。
 2.  教育目的を達成するための発問(ディスカッション中に教師が学習者に投げかける質問) を作成できること。
 3.  ケースメソッド教授法を理解し,自身の教育現場にどのように応用できるかを説明できること。

 第1回(対面)では,「ケースメソッド授業にはどのような準備が必要か」をテーマにしました。まず,ケースメソッドに関する講義を行い,その後,自作ケース教材「言われた通りにしているのに」を用いてディスカッションを行い,学習者の立場でケースメソッド教授法に基づくディスカッションを体験していただきました。

 その上で,授業計画書の配布と解説を行い,教師の立場から考えてもらいました。主催者らが日々の授業にケースメソッドをどのように取り入れているかについて話し,質疑応答を行いました。
 第2回(オンライン)では,「問いをどのように立てるか」をテーマにしました。前回のアンケートに記載された質問に回答した後,自作ケース教材「「つ」が言えない」を用いて学習者としてディスカッションを体験した後,教師の立場から授業計画書を見て考えてもらいました。また,宿題として,参加者に「「つ」が言えない」を用いた授業計画書の一部(「学習者の背景とそれに応じた教育目的・獲得してほしいこと」)を次回までに作成してもらうこととしました。
 第3回(オンライン)では,「ディスカッション授業の計画書を作る」をテーマにしました。前回のアンケートに記載された質問に回答した後,宿題をグループごとに共有し,主催者らが作成した例を示しながら解説を行いました。また,第1回・2回と同様,自作ケース教材「もっと友達を作ればよかった」を用いたディスカッション体験および授業計画書の解説を行いました。
 参加者(27名)へのアンケートの結果,ほぼ全員が毎回のセミナーについて「とてもよかった」または「よかった」と回答していました。また,「ケースメソッドのよさを体験できた」「とても濃密なセミナーだった」「学びの多いセミナーだった」「貴重な体験ができた」といった声が寄せられました。一方で,3回の研修でケースメソッドの要点をすべて理解してもらうには限界があり,研修を通して参加者に獲得してほしいことを十分に身につけてもらうことは難しかったと感じています。
 今後も,ケースメソッドの知見を日本語教育現場におけるディスカッション授業実施に生かせるよう,セミナーを行っていきたいと思います。

資料

#宮地裕基金人材育成研修講座