2024年度宮地裕基金人材育成研修講座 実施報告「日本語教育関係者のためのジェンダーへの気づき」
- 交流・イベント
- 2024年11月28日
- 広報委員会
主催者
加藤恵梨,北野浩章,三枝優子
研修講座名
2024年6月15日から7月13日までの土曜日に,日本語教育関係者を対象とし,「日本語教育関係者のためのジェンダーへの気づき」をテーマとした研修講座を開催しました。本講座は5回シリーズで,講師によって提供された話題をもとに,普段見聞きしたり,使用したりしている日本語の中に無意識の思い込みがひそんでいないかについて考えることを目的としました。各回には,日本語教師および日本語教育を専門とする大学院生を中心に,最大25名の方が参加してくださいました。
第一回目は,名古屋の会議室で対面で開催しました。「日本語にひそむアンコンシャス・バイアスについて考えよう」というテーマで,北野が講師となり,日本語とジェンダーについてこれまでどのようなことが問題になってきたかについて紹介しました。
第二・三・四回目はオンラインで開催しました。まず第二回目は「ジェンダーからみる日本語教科書」というテーマで,水本光美氏が講師となり,日本語教育の現場で広範に使用されている日本語教科書におけるジェンダーの扱いについて様々な角度から考察し,若い女性の文末詞や男女の文末詞の違いの提示は必要かといった今後の教科書への提案を行いました。第三回目も水本氏が講師となり,「現在の社会を伝える教材を選ぶにはどうしたら良いか」というテーマで,ジェンダーの点から現在の社会について見つめ直し,現在の社会を伝える日本語の教材とはどのようなものか,どのように選んだら良いのかについて考えました。グループディスカッションでは,「日本語教師が伝えたい日本/日本文化とは?」「勤務先から指定された教科書の中にジェンダーの視点からどうかと思うことが書いてあったら,あなたはどうする?」などについて話し合いました。さらに第四回目は,第二回と第三回で学んだことや話し合ったことをもとに,三枝と加藤が話題提供者となり,「ジェンダーからみる日本語教科書と教材」というテーマで,日本語教育の現場で広範に使用されている日本語教科書や教材を使って授業をする際,具体的にどのような点に気をつけて授業を行ったら良いのかについて話し合いました。最終回の第五回目は再び名古屋の会議室で対面で行いました。これまでの回のまとめとして,「日本語教育関係者のためのジェンダーへの気づき」というテーマで,日本語教育関係者が注意しなければならないことや,日本語教師が授業をしたり,学習者と接したりする際に求められることについて話し合いました。
事後アンケートでは,「ジェンダーについての多くの気づきを得た」「女性言葉の使用に関する研究結果を見て,年代差があることや,現実社会での若い世代では使用されないことがわかった」「授業をする際に得た知識を活かしたい」「まだまだ自分の意識が足りないと感じた。思っていなかった視点もうかがえて新鮮だった」といったコメントをいただきました。参加者のジェンダーへの気づきや,今後の活動に役立つ気づきを促すことができたのではないかと推察します。
今回の講座は2回を名古屋での対面開催,3回をオンライン開催としたため,すべての回,特に対面の回に出席することが難しい方が多くいらっしゃいました。次回開催する際には,すべての回をオンラインにし,どこの国・地域からでも参加しやすいように工夫いたします。また,本講座では講師によって提供された話題をもとに参加者と話し合いましたが,次回は事前に参加者に話し合いたいことを伺い,それについてディスカッションする時間を設けたいとも考えております。今後も今回のような相互学習を継続し,日本語教育関係者とともに,普段見聞きしたり,自身が使用したりしている日本語の中に無意識の思い込みがひそんでいないかについて考えていく所存です。
資料
- 研修講座ポスター
- 2025年度宮地裕基金人材育成研修講座の公募について(申請受付期間:2025年1月20日~2月2日)
#宮地裕基金人材育成研修講座